No.2

2006年3月25日 発行




「詩の通路・ゼミ」 イントロダクション(全3回)より


 これまで、1月31日、2月5日の2回、「詩の通路・ゼミ」を行なった。この集まりがどのようなかたちになりそうか、また、どのようなかたちにしていきたいか、少しずつみえてきたように思える。参加者は今のところ少人数だが、どの方もそれぞれ言葉に関わる問題意識や創造的な意欲を持たれている。1・2回目は、企画側の私たちの活動やこの企画の趣旨を説明し、できるだけ、参加者のやっている事、考えている事を話してもらうようにした。今後も、参加者の話を引き出すようにしたい。

 このゼミを始めた理由の一つは、活動を持続できる場をつくることだ。イントロダクション以降のゼミでは、個人又は共同で創作する課題設定もできればいいと思う。それは、詩や作曲を教えるというより、自分たちでゲームをつくるというゲームのようなものだ。そういう活動から、多くを学ぶことができる。

 ゼミには、テーマと内容も準備していて、1・2回目は「歌謡曲への旅」というテーマを立て、いくつかの観点からアプローチした。このテーマは、既存のジャンルとしての歌謡曲が対象とは限らず、むしろ、歌謡曲的なるものをもとめながら、個人的かつ超個人的なうたの記憶をたどってみたかったのだ。ラジカセだがCDの音源を聴きながら話し合った。また、例えば、ポピュラーソングのポピュラーとはどういうことか、スタンダード・ナンバーはどうしてスタンダードなのか、またあるいは、フォークロアなものからポピュラーなものへの近代化、シンガーソングライターのあり方とよりプロ化した分業体制のあり方の比較、等々も話題に出された。

 しかし、ポピュラーソングといっても世代差があり、共有されているものは想像以上に少ない。これからもうたが生まれるとしたら、うたの記憶のようなところからではないかと思っていたが、いま、ひとびとのうたの記憶はどうなっているのだろうと思われた。

 なお、3回目のテーマには、4月27日の公演と関連してブレヒトを取り上げる。


 2月26日に「詩の通路・ゼミ」の第3回を行なった。初めての方もあり、まず、参加者の話をうかがうことから始めた。今回はブレヒトをテーマに取り上げ、音楽との関わりに焦点を絞って論点を取り出すことを考えた。

 演劇の筋の対する音楽の使い方にブレヒトの演出がある。それが音楽の身振りであり、あるいは異化効果になる。分かりやすい手法としては、芝居の流れを中断して曲名をニュートラルによみあげ、それからソングを歌い出したりする。ブレヒトと共同作業したクルト・ワイル、ハンス・アイスラー、パウル・デッサウらの音楽家は、二十世紀初頭の前衛的な音使いをふまえたうえで、それが自己目的化しない音楽を指向した。彼らの音楽と、シェーンベルクの音楽やディートリッヒの歌う当時の風俗的な音楽を聴き較べ、似ているところや違うところの聴き取りを試みた。

 また、80年代にNYのアーティスト達がワイルの作品をそれぞれのやり方でプレイしたCDを取り上げ、アレンジとかリメイクとかのレベル以上に、別の時代に生まれ変わらせているような、ワイルの音楽と自分達との関係のあり方も参照した。

 ブレヒトの歌う「メッキー・メッサー」(『三文オペラ』)も聴いてみた。ブレヒトの発声はくせが強く、身振り性の強い歌い方だ。実際ブレヒトは、シュヴァーベンなまりが強かったといわれている。ブレヒトが歌っているのを聴いていると、国家的・中央的・標準化的でない、固有性の言葉という身振りが伝わってくる。それは、民謡や大道芸人の語り唄から多くを学ぶ彼の詩論でもあった。

 異化効果は感情移入を切断し感情同化から引き離す、というように手短には解説されがちだ。ナチス・ファシズムの政治美学的プロパガンダに、コミュニスムは芸術の政治化で応戦していたので、異化することは政治的身振りでもあった。ブレヒト自身は、ヒューマニスムの感情にコミュニスムの組織の倫理を対立させる弁証法の人間観で生きようとしていたみたいだが、たいていの人にはそんなことはできない。感情の扱いはいつも矛盾する問題だ。結局、コミュニスム社会の試みは失敗している。コミュニスムと関係ないが、感情同化しにくい音楽を聴こうとする人は少ない。

 参加者から、ゴダールの映画で、見出しのような字幕を挿入して場面を分割していく編集の仕方にブレヒトとの共通性があるという話が出され、ブレヒトの継承について視野を広げることができた。

 ゼミとしては、音源の選択、組み合わせ、どのように音楽をかけるか、そういう自分達の身振りも、準備段階から、より効果的であるように進化させねばと思えた。


原牧生(打落水狗  DA LUO SHUI GOU)

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